2017年5月8日月曜日

第16回 映画評論 ゲットアウト Get Out 10点!

ゲットアウト(Get Out)
ジョーダン・ピール
10点/10点

超ネタバレ・あらすじ
要約すると、要するに、
黒人の主人公・クリスは
白人の彼女・ローズの実家に行くことになって、
いざついたら、変人だらけの家族だった。
そして、黒人も何人かいるけど、
精神障害者じゃないかと思うぐらい、
喋り方や振る舞いが変だった。
結局、どういうことかと言うと、
このローズ一家は、
ローズが毎回連れてくる「彼氏」に、
催眠術をかけ、
「彼氏」の脳を取り出す。
そしてオークションが開催され、
落札した人の脳はこの「彼氏」の体に、
移植される。
新しい体で生き続けられることに。
こわーーーーい

まず言っときたいこと:
まず、この監督はすごく有名なコメディアンであることを
みなさんに分かっていただきたい。
「Key & Peele」というコンビのメンバーで、
テレビやユーチューブで大人気を博してる。
俺は大の笑い好きだから、
もちろん前から知ってて、
しかもこのコンビのネタは
なんか松本人志と共通してるとこがあるなぁと、
思ってた。
こんなコメディアンがこういうシリアスな映画を撮るのは、
北野武以来じゃないかな。

全体を通して言えること:
完璧。
起承転結、完璧。
細かいところの描写、完璧。
役者さんたちの演技、全員完璧。
伏線の張り具合と回収、完璧。
リアリティ、完璧。
ドキドキ加減、完璧。
結末、完璧。
ここ数年で一番よくできた映画だと、
俺は思う。

よかったところ:
多すぎるから、番号つけて
羅列するわ。
1、起承転結
ローガンがローズの兄貴に拉致される
最初のシーン。
そこでまず、「怖い」という感情を
観客に植え付ける。
そしてその時兄貴が被ってたマスクが、
最後の最後に、クリスがその兄貴の車で、
見かけるという、リンク。
そして、ストーリーの進み具合。
ゆっくりめのスピードから始め、
クライマックスのところで一気に加速した。
いやー、お見事。

2、伏線の回収
まず、この映画のいいところは、
こんな伏線が気づかなくても、
十分楽しめる。そこがいい。
でも、
一回見ただけじゃ気づけられないかもしれないけど、
実はいろいろ伏線が張ってある。
まず、最初のシーンのマスク、
は先言ったけど、
次はローズのおじいちゃんの写真。
そこで、おじいちゃんはオリンピックで、
走る種目において黒人選手に負けたことが
明かされた。
だから黒人ばかりをターゲットにするんじゃね
という推測ができてしまう。
そして中身はローズのおばぁちゃんが入ってる
黒人女性が、
いつも髪の毛を整える習慣。
それはカツラで脳移植手術の跡を
隠そうとしてるから。
あとローガンがフラッシュライトを浴び、
急に人が変わったのと、
先言ったカツラの黒人女性が、
急に涙を流したのも、
本来の自分が少し表に出てきたという、
伏線。

3、演技
まずローズの人格の変わり具合。すごい。
そしてローズの家族みんな
なんか隠し事があるような表情。絶妙。
そしてローズの母の催眠術のかけ方、
一歩間違えれば、馬鹿馬鹿しくて
「そんなのありえないわ!」とツッコまれる所だが、
見事にナチュラルに演じきった。
そして脳移植手術をされた黒人三人、
ただただ変人を演じてるわけじゃなくて、
白人の爺ちゃんと婆ちゃんを真似しつつ、
観客にバレないように変人要素も入れた。
最後に、やっぱり主役のクリスはすごい。
役の設定は恐らく
「普段は大人しいけど、
いざな時はちゃんと危機管理ができる人」
という役だけど、
しっかりとできてた。
最後のところは、超人並みのことをやり遂げて、
脱出したけど、心のとっかで、
「でもこのクリスだったら
こんなこともできちゃうわな」と
思ってしまった。

4、緊張と緩和
明らかに、クリスがローズの家にいるときは
緊張で、
クリスが親友のロッドに電話してる時は
緩和。
ロッドは元々お喋りだから、
こんな緊張な場面の中で
急に出てきたら、
やっぱり笑ってしまう。

5、黒人が被害者という発想
実はアメリカではもう腐るほど
ネタにされてる話だが、
なんでホラー映画やサスペンスは
アホな白人ばかりが被害者になるんだ、
という話。
よくコメディアンたちが言うのは、
それは、黒人は危機管理が出来すぎてるから。
黒人は、リスキーな行動を取らない。
だからこそ、この映画は面白かった。
こんなに極めて理性的でかつ
危機管理ができてるクリスでさえ、
この罠にはまってしまったという、
リアルな恐怖感。
逆転の発想。

6、ローズの家族は、リベラル
アメリカはリパブリカンとリベラルという
二つの政党があり、
イメージとしては、
リパブリカンの中に人種差別者が多く、
リベラルは平等を謳歌している。
でも黒人たちをまるで、
乗り換えられるの車のように扱う
ローズ一家は、リベラルだった。
「可能なら、三回目も
オバマに投票する」と言うほど
リベラルだった。
恐らくこれは監督のメッセージであって、
「黒人たちを苦しめ、殺しているのは
あからさまな人種差別者ではなく、
表ではリベラルだと言い張っている
偽善な白人たちだ」
というメッセージ。
まったくの憶測だけど。

悪かったところ:
ない。
ほんっっっとうにない。
だから10点あげたというのもあるけど。

唯一ちょっと審議してもいいのは、
エンディング。
実は監督のジョーダンは、
バッドエンドにしたかったらしい。
クリスが一生懸命ローズの家から
脱出したあと、
警察に逮捕されるという結末。
でもあえて変えたらしい。
それは、観客の黒人たちに
希望を与えたかったのか、
興行収入狙いだったのか、
単純にストーリー的にハッピーエンディング
のほうがよかったのか、
監督にしかわからないけど。
俺は、ハッピーエンディングで
よかったと思う。
じゃないと、ただただ最後の最後まで、
観客を裏切ろうとしてるだけで、
安い映画になってしまう。

はい、以~~~~上!

いやー、いい映画だった

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